シーラー塗装は、外壁塗装の下塗り工程の種類の1つで、欠かすことのできない作業です。
普段生活する中で、シーラー塗装という言葉を聞くことは住宅業界に勤めている方でないとまずないため、様々な疑問があると思います。
この記事では、
- シーラー塗装って何?
- いつ実施する作業なの?
- 欠かせないくらい重要な理由は?
- どんな種類があるの?
- いくらかかるの?
このような疑問にすべてお答えしますでの、全く知識のない方でもこの記事を読んでいただければ理解が深まります。
シーラー塗装についての理解を深め、外壁塗装を成功に導きましょう。
- シーラー塗装は接着剤、吸い込み防止、ひび割れ補修など重要な役割がある
- シーラーには水性と油性タイプがあり、特徴や用途、乾燥時間が違う
- シーラー塗装の費用相場は600円~1,000円/㎡
シーラー塗装とは?
シーラー塗装とは、下塗りの一種で最初に塗装する作業です。
シーラーという名前の由来は「接着する」「覆い隠す」という意味の『seal』という英語からきており、接着性や吸い込み防止の役割があります。
シーラーは大きく分けて『水性タイプ』『油性タイプ』の2種類あり、外壁の劣化状態によって様々な機能を持ったシーラーを使い分ける必要があります。
シーラー塗装を適当に実施してしまうと、外壁塗装の剥がれや仕上がりに直接影響が出てきますので、非常に重要な作業です。
シーラー塗装は外壁塗装全体から見てどの工程?
シーラー塗装とは外壁塗装全体の中で、下塗り作業の工程に入ります。
簡単に外壁塗装の全体工程をお伝えすると、
上記の工程があり、シーラー塗装は塗装の最初の工程です。
前工程の下地処理で実施した高圧洗浄の水やコーキングをしっかり乾燥させた状態からシーラー塗装がスタートします。
シーラー塗装の役割と重要性
シーラー塗装には3つの役割があります。
各役割について詳細を説明します。
外壁と中塗り・上塗り塗料を接着させる
シーラー塗装には外壁と中塗り・上塗り塗料の接着性を良くする役割があります。いわゆる『接着剤』の役割と同じです。
中塗りや上塗り塗料にはあまり接着力がないため、シーラー塗装は欠かせません。
シーラー塗装を適当に実施してしまうと、中塗り上塗り塗料の剥がれに繋がります。
剥がれが起きるタイミングは立地条件や塗料によって様々ですが、外壁塗装の保証期間は5年が一般的です(業者さんや塗料によって異なります)。
保証期間内であれば保証工事として無償で手直し可能ですが、保証期間が過ぎて剥がれが起きた場合は莫大な費用(30坪2階建ての場合120万円前後が平均的)が再度かかります。
保証の対象であっても、長い工事期間と業者さんとの打ち合わせ時間などの手間がかかるため、シーラー塗装はおろそかにしてはいけない重要な作業です。
外壁に中塗り・上塗り塗料が吸い込まれるのを防ぐ
シーラー塗装は、外壁に中塗り・上塗り塗料が吸い込まれるのを防ぐ役割があります。
経年劣化で外壁はひび割れや欠損が増えると、外壁はスポンジのような状態になり、塗料を吸い込みやすくなります。
外壁が塗料を吸い込むと、塗料本来の耐久性を発揮するためのに必要な塗膜の厚みが不足するので、塗料の吸い込みを防止しなければなりません。
シーラーを塗り、先にシーラーを吸い込ませることで、中塗りや上塗り塗料の吸い込みを防いでくれます。
外壁の劣化が激しく吸い込みが多いケースでは、シーラーを2回塗ることもあります。
また、中塗りや上塗り塗料が吸い込まれると、仕上がりに色ムラが出る可能性があるため、シーラー塗装を行う必要があります。
下地の小さなひび割れを補修する
シーラー塗装は小さなひび割れを補修する役割もあります。
シーラーを塗ることで小さなひび割れを埋めることができ、耐久性を高めることに繋がります。
シーラー塗装を適当に実施した場合、ひび割れが広がっていき仕上がりにまでひび割れが出てくる可能性があります。
そうならないためにも、シーラー塗料でひび割れをしっかり埋める必要があるのです。
幅0.2mm以上のひび割れについては、コーキングで補修するなど適切に対応する必要があります。
シーラーの種類
タイプ | 種類 | 特徴 | 用途 | 乾燥時間 |
---|---|---|---|---|
水性タイプ | ヤニ止めシーラー | ヤニやシミの防止、浸透性や固着性がよい | 室内で使用することが多い | 約4時間以上 |
水性タイプ | カチオン系シーラー | 浸透性や密着性、経済性がよい | 外壁や内壁 | 約4時間以上 |
油性タイプ | 弱溶剤系エポキシシーラー | 臭いが強い | 劣化の激しい下地 | 約2時間以上 |
油性タイプ | 強溶剤系エポキシシーラー | 臭いが強い | 劣化の激しい下地 | 約2時間以上 |
※乾燥時間は気温やメーカーによって異なります。
こちらがシーラーの種類と特徴などをまとめた表です。
シーラーには大きく分けて『水性タイプ』『油性タイプ』の2種類があり、水性タイプには『ヤニ止めシーラー』『カチオン系シーラー』、油性タイプには『弱溶剤系エポキシシーラー』『強溶剤系エポキシシーラー』に分けられます。
シーラーと上塗り塗料には相性があり、基本的には塗料メーカーの方で「この上塗り塗料には、このシーラー」といったように指定されています。
それぞれのシーラーがどのようなものか詳細を説明します。
水性タイプ
水性シーラーは主成分が水でできており、油性と比べて臭いが少ないことが特徴です。
ただ、乾燥は油性と比べて時間がかかります。
耐久性にはグレードがあり、油性と比べて耐久性が劣る商品が多いので、長持ちさせるためにグレードの高い商品の選定をおすすめします。
外壁塗装においては、比較的劣化が少ない下地に使用します。
ヤニ止めシーラー
タバコのヤニや雨でにじんだシミなどを防いでくれるシーラーです。浸透性や固着性に優れています。
外壁塗装でも使用することはありますが、内装の壁や天井に使用することが多いです。
塗料メーカーによっては、透明タイプとホワイトタイプがあります。
カチオン系シーラー
浸透性や密着性、経済性に優れるシーラーです。
薄い塗膜を作る『造膜型』と下地に浸透する『浸透型』があり、こちらも透明タイプとホワイトタイプがあります。
外壁や内壁で使用でき、適用範囲が広いのが特徴です。
ただし、強溶剤系塗料を上塗りとして使用することはできません。
油性タイプ
油性シーラーは溶剤系塗料であり、引火性があるため取り扱いには注意が必要な塗料です。
プロの業者さんが使用する塗料であり、臭いが強い特徴を持ちます。
乾燥時間は水性に比べて早く、比較的劣化が激しい下地に使用します。
弱溶剤系エポキシシーラー
下地補修に優れており、劣化の激しい場所で使用するシーラーです。
上から塗れる塗料としては、水性系や弱溶剤系が塗装できます。
強溶剤系エポキシシーラー
下地補修に優れており、劣化の激しい場所で使用するシーラーです。
非常に強い溶剤なため、旧塗膜に膨れや縮みなどを発生させる可能性があり、事前に下地の状況調査診断が必要です。
シーラー塗装の工法
工法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
ローラー工法 | 丁寧な作業が可能 塗料が無駄にならない | 作業が難しい |
吹き付け工法 | 作業が早い | 風が強いと作業できない 音がうるさい 無駄な塗料が出る |
シーラーを塗る場合、基本的に、
- ローラー工法
- 吹き付け工法
の2種類のどちらかの工法で塗ります。
それぞれにどのような特徴があるのかお伝えします。
ローラー工法
ローラーと呼ばれる先端がロール状の道具を使って、転がしながら塗る工法です。
最も一般的な塗装方法なので、外壁塗装について調べる中で既にご覧になっているかもしれません。
ローラー工法のメリットとしては、
- 繊細で丁寧な作業が可能なこと
- 吹き付け工法よりも塗料が無駄にならないこと
が挙げられます。
一方、デメリットとしては、難しい作業なので慣れた職人さんが作業しないと、
- ムラが出る可能性があること
- 飛散する可能性があること
が挙げられます。
また、ローラーだけで塗るのではなく、角や凹凸部、細かな場所ではハケを使って塗り、平滑な平場の部分をローラーで塗ります。
吹き付け工法
スプレーガンと呼ばれる、水まき用のシャワーのような形をした機械を使用してシーラーを噴射し塗装する工法です。
吹き付け工法のメリットとしては、
- とにかく作業が早いこと
が挙げられます。飛散防止養生の手間はかかりますが、それを差し引いても作業効率は良いです。
一方、デメリットとしては、
- 風が強いと作業しにくいこと
- 機械音がうるさいこと
- 無駄な塗料が出ること
が挙げられます。
噴射しますので、風が強いと飛散のリスクが高く、また、コンプレッサーという空気を圧縮する機械を使うため、モーター音が絶えず発生します。
他にも、塗料が無駄になることがあり、費用アップに繋がる可能性があります。
シーラー塗装の費用相場
見積り内容に記載されるシーラー塗装の費用は、平均的には600円~1,000円/㎡が相場です。
塗料の種類や、下地の状態によっても費用相場は変わってきます。
シーラーとプライマー、フィラーの違い
この3種類はいずれも下塗り塗料という面では共通しています。
シーラーとプライマーは基本的に同じもので、モルタルやサイディングなどいろいろな外壁に使用される下塗り塗料です。
フィラーは主にモルタルの外壁に使用される下塗り塗料で、ひび割れ補修として使用されることが多いです。
まとめ
シーラー塗装は外壁塗装において欠かすことのできない作業なのは、適切に施工されないと接着不良や塗料の吸い込み、ひび割れに繋がるためです。
また、下地の状態によってシーラーを選定する必要があり、それぞれの特徴や用途などを理解した上で、業者さんに選んでもらう必要があります。
シーラー塗料や工法の選定は経験豊富な業者さんでないと難しいため、信頼できる業者さんにお願いするようにしましょう。
この記事が外壁塗装を成功させるための1つの材料になりましたら幸いです。